課題推進の形骸化を防ぐ!
薬局マネジメントにおける質的評価のすすめ
(薬局経営コンサルティングブログ)

目標設定を形骸化させないための質的評価のポイント

 新年度に入り、調剤報酬改定を踏まえて新たな課題を設定し、その達成に向けて取り組んでいる薬局も多いことでしょう。
 目標設定の際、KPI(重要業績評価指標)やKGI(重要目標達成指標)といった数値を意識して取り組むケースは一般的です。しかし、過去に中医協で「かかりつけ薬剤師の取り組みがノルマ化している」と指摘された事例からもわかるように、数値化のみに頼って課題推進を図ると、本来の目的が見失われ、単なる「数字合わせ」へと形骸化してしまうことがしばしばあります。


 こうした事態を避けるために不可欠なのが「定性目標」の設定です。ところが、定性目標は「抽象度」が高くなりやすく、評価や検証があいまいになりがちです。結果として、耳障りの良いキャッチフレーズ的なスローガンを掲げるだけで終わってしまう懸念があります。  
 

 そこでぜひ活用していただきたいのが、「MSC(モスト・シグニフィカント・チェンジ:最重要変化)」という質的評価の視点です。MSCとは、欧米のNGOが用いている参加型・質的評価手法で、1990年代にリック・デイビース博士によって考案されました。日本国内でも、日本NPOセンター(震災復興事業)、環境省(ESD事業)、トヨタ財団(地方創生事業)などで採用実績があります。その最大の特徴は、人間の意識や行動変容といった「数量化できない質的(定性的)な変化」を、現場のエピソード(物語)という形で生き生きとすくい上げ、それを評価や検証の材料とする点にあります。

 このMSCの視点を、実際の薬局業務に応用してみてみましょう。例えば「かかりつけ薬剤師業務の推進」というテーマで、以下のような目標設定がなされた板とします。
【定性目標の例】
 かかりつけ薬剤師の継続的な関与により、対象患者さんの薬識・病識が深まる。その結果、服薬コンプライアンスが改善され、
 症状の安定や検査値の向上、 生活習慣の改善へとつながっている。
【定量目標の例】
 
かかりつけ薬剤師による調剤時残薬調整加算:月〇回(KPI)
 薬学的有害事象等防止加算:月〇回(KPI)メイン以外の医療機関からの処方箋受付回数:月〇〇回(KGI) 
 

このように、ひとつのテーマに対して定性・定量の両面から目標を設定した上で、振り返りや報告の場面では、定量的な数値結果の報告にとどまらず、定性目標に基づいた具体的な「患者さんの重要な変化(エピソード)」を収集し、チーム全体で共有するのです。(表参照)

 

 数字だけでは見えにくい、「どのような変化を生み出せば、真の『成果(うまくいった状態)』と言えるのか」「私たちが提供する医療サービスが、患者さんにどのようなアウトカム(成果)をもたらし、どのようなレスポンスが得られたのか」というイメージを、スタッフ全員で共有することが重要です。
 こうしたエピソードの共有は、数字を追うだけの疲弊を防ぎ、スタッフのモチベーション向上にもつながります。結果として、取り組みの形骸化を防ぎ、薬局が果たすべき本質的な価値の追求を力強く後押ししてくれるのです。 
 
皆様の薬局での取り組みはいかがでしょうか。ぜひMSCの視点をマネジメントに取り入れ、形骸化しない、本質的な課題推進を進めてみてください。

薬局経営者研究会では、経営課題推進を形骸させないための管理者育成の場として 
管理者スキル研修
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多くの皆様のご参加をお待ちしています。



2026.04 一般社団法人薬局経営者研究会 経営コンサルタント 久保 隆

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