KPIの活用を形骸化させないためのKGIとのつながりの必要性
6月に入り、令和8年度の調剤報酬改定も本格的にスタートしました。これを受けて、多くの薬局が新たな課題を設定し、目標達成のためのKPI(重要業績評価指標)を導入して取り組みを始めているのではないでしょうか。しかし、KPIを導入したものの、現場が数字を追うことだけに終始し、本来の目的を見失ってしまうケースは少なくありません。今回は、KPIを有効に活用するための留意点と、それに不可欠なKGI(重要目標達成指標)という考え方について解説します。
●KPIとKGIの本質的な関係
まず、それぞれの言葉の定義を整理しておきましょう。
KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)とは、組織や事業が最終的に達成したい「最終目標」を定量的に表したものです。
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)とは、その最終目標(KGI)を達成するための中間プロセスが適切に実行されているかを測定する
「過程の指標」です。
KPIは、KGI達成に向けたストーリーのプロセスの指標として活用しなければ、形骸化してしまいます。というのも、本来KGIの達成には中長編的な期間を要する
ため、KPIはそのプロセスの指標として設定されたものであり、あくまでも最終的に達成したいゴールそのものではないからです。しかし、KPIという指標はある意味
でわかりやすく具体的な数値であるため、現場は「それだけやっていればいい」「数字さえクリアすればいい」という部分最適な思考に陥りやすいのです。
●ストーリーでつなぐ目標設定
そうならないためには、KGIにつながるストーリーを踏まえて、KPIの達成が単なる数値のクリアだけでなく、最終的な目標に近づいているかを確認する必要が
あります。
例えば、下表に示されている「目標設定のストーリー例」を見てみましょう。薬局の現場では、「調剤管理」「薬剤調整」「服薬管理」といった日々の
業務が出発点となります。これらを原資として、「服薬フォローアップ」や「かかりつけ推進」「調剤時残薬調整」といった具体的なアクションをKPI(候補)として
設定します。
しかし、これらをただこなすことがゴールではありません。これらは「薬学的有害事象の防止」や「ポリファーマシーの解消」へとつながり、さらに「ADL&QOLの
維持向上(患者立脚型アウトカム)」や「検査値等の維持改善(臨床的アウトカム)」という中間アウトカムを生み出します。そして最終的に、これらすべてのプロセス
が「患者・顧客満足」「健康寿命の延伸」「患者・顧客増」「持続的な成長」というKGI(最終目標達成指標)へと結びついているのです。

このように、日々の業務(KPI)がどのような価値を生み出し、最終的な薬局の理想像(KGI)にどう貢献しているのかという「一本のストーリー」をチーム全体で
共有することが極めて重要です。
●「エピソード」で測る定性的な変化とそのメリット
また、KGIへの達成度を定量的な数値だけで測りにくい場合は、現場で起きた重要な変化を「エピソード(事例)」として表現することで、チーム内で共有しやすく
なります。
変化をエピソード化することには、以下のような大きなメリットがあります。
①納得感とモチベーションの向上: 数字の裏側にある「患者さんの笑顔」や「感謝の言葉」といった具体的な成果を共有することで、
スタッフが自分たちの仕事の価値を実感しやすくなります。
②定性的な成果の可視化: 数値化が難しい「信頼関係の構築」や「ケアの質の向上」といったプロセスの重要性を、チーム全体で
正しく評価できるようになります。
③成功パターンのナレッジ化: 「なぜそのKPIがKGIにつながったのか」という背景や文脈が言葉として残るため、他のスタッフへの
教育や、新たな取り組みへの応用が容易になります。
新体制が始まった今だからこそ、単に目の前の数値を追うのではなく、その先にある「KGIへのストーリー」をスタッフ全員で描き、共有してみては
いかがでしょうか。
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2026.06 一般社団法人薬局経営者研究会 経営コンサルタント 久保 隆
